期間限定でそのまま賃貸「家賃でDIY」モデル

工事費も広告費も不要!?

前回のコラムでは「一部屋活用」という活用方法を紹介しましたが、今回は「家賃でDIY」モデルをご紹介します。

空き家のお悩みで特に多いのが「改修費や解体費が高いので、そのまま放置している」という相談です。しかし、実際にはそのまま使える物件だったり、DIYできる物件を探している人にとっては魅力的な物件だったりします。物件に可能性を見出してくれる人とのマッチングが上手くいけば、工事費も広告費も掛けずに、そのまま活用できるのです。

特に、山形では戸建ての空き家を活用して、学生がルームシェアを行う方法で活用が進んでいます。この理由としては、地方には戸建て空き家がたくさんあることに加え、空き家に住みながらDIYしたいという学生が多いことでした。

家賃でDIYのスキーム

 

1年目の家賃をDIYに

今回のモデルの最大の特徴は、2年間の暫定利用として、1年目の家賃をDIY費に充て、2年目の家賃を所有者に支払う仕組みです。

例えば、学生が3万円の家賃で4人住む場合、一ヶ月で12万円、一年間で約140万円の資金が捻出できます。学生にとっては、約140万円分のDIYができるので、実践的な学びの場になるほか、遠方から通っている人にとっては、近くに住む選択肢にもなります。

所有者にとっては、2年後には140万円分バリューアップした物件と、140万円の資金が手元に残るので、3年目以降は活用を継続してもいいですし、売却につなげることも、資金を元手に解体することもできます。

さらに、山形市にとっては関係人口や定住人口が増えることにつながるので、地域全体にとってもプラスとなり「三方良し」の関係になります。空き家のままにしておくより、はるかに有益な選択肢になるのです。

 

事例①:一軒家でルームシェア

この方法で実際に活用している、2つの事例を紹介します。

まず1つ目は、山形市・東原町にある一軒家。所有者さんは「相続後に解体も検討したが、思い入れもあるのでしばらく活用したい」と考え、勉強会に参加してくれました。そこで、大学で興味がある人を募ったところ、2年生の学生4名が手を挙げてくれて活用を進めることにしました。

東原町の一軒家

 

個室に住みながら、共有部をリノベーション

まずは、学生と一緒に活用方法の検討です。すぐにでも滑るような状態だったので、4人の学生が2階の個室に住みながら、共有スペースである和室をリノベーションすることになりました。方針を決めた後は、企画書の作成です。改修内容だけではなく、DIYの予算やスケジュール、運営方法やルールなどをまとめ、大家さんが安心できるようにプレゼンテーション。その結果、大家さんも快諾してくださり実際に入居スタートすることになりました。

 

室内の「縁側」と「庭」

次にデザインの検討です。みんなで話し合った結果、共用スペースはプライベートとパブリックの中間領域と位置づけ、集まることを楽しみつつ、暮らしが地域に滲み出るような場所にすべく、以下2つの改修を行いました。

①床の間と地袋を活用して、室内の「縁側」のような小上がりスペースを整備することで、みんなが集まれる空間にする

②広縁を室内の「庭」のように設えることで、カーテンと植物を介して地域とつながる空間にする

また、快適な住環境になるように、床・壁は断熱処理を行い、合板・塗装仕上げで整えたほか、建築士の助言を元に、技術基準への適合を図っています。

下地を組み、スタイロフォームで断熱処理
カーテンの試作

その他にも、カーテン・クッションは、植物に馴染むデザインにするために、デザイン・制作を工芸デザイン学科の学生に協力してもらいました。家具は、元々空き家あった物を活用し、研磨した上で塗装しています。以上のリノベーションを経て、以下のBefore・Afterを実現しました。学生に感想を聞くと「住んでみると快適で、空き家という感じはしない」「実際に空間を作ることができて面白い」といった感想が寄せられています。また、大家さんからも「そのまま空き家にしておくより、誰かの役に立てて嬉しい」という声をいただいており、空き家活用が暮らしの充実につながったようです。

Before
After

事例2:蔵をギャラリーに

次は、先ほどと同じモデルを応用して、蔵をギャラリーとして活用した事例です。

場所は、山形市の郊外、山の麓にある一軒家。敷地内には大きな畑や池があり、その向こうには川や山が広がる、自然豊かな環境です。大家さんから「解体も検討したが、費用が高くて困っているときに、TVを見て活動を知った」と連絡がありました。担当は、大学の授業で空き家を活用したルームシェアを提案した齋藤さんが、友人を集めて住むことになりました。

郊外の蔵つき住宅

 

母屋で暮らし、はなれを再生

仕組みとしては、先ほどの事例と同じモデルをベースとし、母屋に住みながら、敷地内の蔵をギャラリーとしてDIYすることにしました。これまで物置として閉ざされていた蔵を、畑がある豊かな環境に開くとともに、暮らしながら作品を制作・発表できる場にしようという提案です。今回も事前にCGでデザインを検証した後に、大家さんにプレゼンテーションをし、合意を得てから材料調達・DIYを実施しました。

イメージコラージュ
屋外に開かれたテラス

デザイン:里山ブリコラージュ

ギャラリーのデザインは、周辺環境を最大限に活かすことにしました。まずは、畑に面した壁を撤去し、テラスとして再整備することで屋内外をつなぎました。

また、内部のギャラリーは多様な展示に対応できる環境をつくるため、床を土間に改修し、壁の補修と照明の整備を実施しました。

下地はDIY、仕上げは左官屋さんに依頼
展示しやすい照明整備

また、什器も手作りで制作しました。地域の杉材を使った展示用の大きなテーブルや、もともと蔵にあった古家具を再利用した鉢植え、蛇籠に敷地にあった石を敷き詰めた什器など、什器も身の回りにあるものを活用しています。以下が、Before・Afterです。

Before
After

 

今回は、お金を掛けずにバリューアップを図る「家賃でDIY」モデルでした。大家さんが「活用できない」と思っている物件でも「使いたい」と思ってくれる人はいるはずなので、まずは相談してみることをおすすめします!

次回は「付加価値アパート」モデルを紹介します。お楽しみに!

 

このコラムについて

空き家活用の事例集〜芸工大に学ぶ実践アイデア〜

本法人のアドバイザーでもある、東北芸術工科大学の加藤優一が、学生と共に取り組んでいる、空き家活用の実践例を紹介します。「こんな方法があるんだ」「これなら私にもできるかも!」と思ってもらえるような情報をお伝えしていきます。

著者プロフィール

加藤 優一

1987年山形県生まれ、建築家。東北芸術工科大学専任講師、一般社団法人 最上のくらし舎共同代表理事、株式会社 銭湯ぐらし代表取締役。デザイン&マネジメントをテーマに、建築の企画・設計・運営・研究のプロセス全体に携わる。銭湯と連携したシェアスペースの経営や、山形での空き家活用プロジェクトなど、実践的な取り組みを展開する。